惜しみなく与う



惜しみなく与う




(注)エロスです。ご注意ください




「これでよし、と」
 ふう、と息を吐いて、サクラは肩の力を緩める。部屋の真ん中に置かれている丸テーブルの上、サクラの目の前には、ぎっしりと文字を詰め込んだ報告書が合計七枚。下忍として七班で任務をこなしていたあの頃、恩師であるカカシが受付に提出する報告書は、毎回一枚きりだった。ああ、そんなものなんだ、と思いこんでいたが、それは自分たちに割り当てられた任務が至極簡単なものだったためで、ランクが上がるにつれて報告書の枚数はどんどん増えていった。それでも、今回は七枚でおさまったのだから、軽い方だ。ある任務では、枚数がかさばったせいで、提出時に紐綴じをしたこともある。あれはきっと、目を通す方も一苦労だったに違いない。
 仕上げにさらっともう一度目を通し、筆記用具を片付ける。時計を見れば、十一時をわずかに過ぎた頃だった。明日の予定は、報告書の提出のみ。焦って床に就くことはないが、このところ睡眠不足が続いている。早めに就寝するのも良いだろう。そう心に決めて立ち上がったサクラだが、ふと、ドア越しに気配を感じて、足を止めた。女の一人住まいを訪ねるには、いささか常識を欠いた時間帯だ。
 もしかして。
 そう思うのと、足が動くのはほぼ同時で、玄関ドアの覗き穴から気配の元を探る。
「ナルト……?」
 玄関ドアを開けると、ナルトは一瞬驚いた顔を見せた後、えへへ、と困ったように笑う。
「受付でいのに会ってさ、サクラちゃんの話になったんだってば。そしたら、今日は家に居るっていうし、急に顔が見たくなって……。えーと、来ちゃった」
「とにかく、中に入って」
「お邪魔します」
 帰るの、明日じゃなかった?そう言いたかったのだが、サンダルを脱ぐやいなや、ずるずると床にへたり込んでしまうナルトを見て、サクラは血相を変える。
「ちょっと!あんた、実はバテバテじゃない!」
「やっぱり怒られた……」
 ナルトは、決まりの悪い顔で、うーんと唸っている。入って来られなかった理由は、時間帯のせいだけではなかったらしい。カカシのようにチャクラ切れということはないが、体力バカのナルトがへばるぐらいだ。相当厳しい任務だったのだろう。
「大人しく家で寝てなさい!」
「えー。だってさー、最近ちっとも顔見れてなかったしさー、家に居るってわかったらさー」
 そんなにしてまで会いたいのなら、窓からでも侵入できるはず。しかし、そういう強引な手段に出ることなく、ただ玄関の前で突っ立ってるだけなんて。なんだかいじらしくなって、怒る気はすっかり失せた。壁に寄りかかるナルトの前に、サクラはしゃがみこむ。
「おかえり」
 耳の後ろに手をやり、すっと髪を梳く。ナルトは、気持ち良さそうに目を閉じる。その様子はまるで幼い子供のようだ。手のひらを頬にあてると、すりすりと顔を寄せてくる。ますます子供みたい。くすりとサクラは笑う。
「ただいま。俺ん家じゃないけど、」
 ナルトは言葉をそこで区切り、頬に添えられたサクラの手に自らのそれを重なる。そして顔を横に向けると、唇がサクラの手のひらに触れた。その温度に、ドキリと心臓が鳴る。
「ただーいまぁ」
 声が、手のひらに直接響く。そこから熱が広がり、身体中を駆け巡る。それを知られたくなくて、サクラは咄嗟に手を引っ込めようとするが、重なるナルトの手によって、押さえ込まれてしまった。空いた片方の手は、腰へ。ぐっと引きつけたかと思えば、身体全体で受け止められ、ナルトの肩に顔が着地した。
「あー、サクラちゃんだー」
 腰に置かれた手はするすると持ち上がり、背中や肩、首筋を確かめるように触れていく。大きな手のひらに包まれるのは、サクラとてまんざらでもない。髪に触れ、耳をなぞり、顎に手がかかる。ゆっくりと、唇が重ねられた。二度、三度、と啄ばむように繰り返した後、おさえ切れなくなった互いの熱をぶつけるかのように深く口付けた。サクラは膝を立て、胡坐をかいたナルトの上へ腰をおろす。より密着した体からは、互いの温度が伝わってくる。熱い。
 唇を舌でなぞり、ナルトがサクラの口内に割って入る。探るまでもなく、サクラの方から舌を絡ませてきた。その手はナルトの髪をせわしげにまさぐり、強く求めていることがわかる。途端に柔肌が恋しくなり、サクラのカットソーをたくしあげた。腰から背中へかけての柔らかなラインを、手のひらが愛撫する。
「……ね、ナルト」
 サクラは唇を離すと、息をつく暇も惜しむほど互いの唇を貪っていたせいだろう、少々苦しそうに声を出した。
「どうしたの?」
「今日はやめとこ」
「……なんで?」
 首を小さく傾げて、ナルトが問いかける。
「身体、辛いんでしょ?すごく疲れてる。休んでからにしよ」
「オレね、本当は明日帰る予定だったんだ」
 確かに、その予定だと聞いていた。だから、玄関ドアを開けた時、それを尋ねようと思っていたのだ。結局、聞けずじまいに終わってしまったけれども。
「でも、野営だとゆっくり休めないし。それに、早く帰ったらサクラちゃんに会えるかもって思ってさ。実は、ちょっと体力残してあんの。実際サクラちゃんの顔見たら、気ぃ抜けちゃって情けないことになったけど」
 照れ笑いを浮かべて、ナルトは続ける。
「サクラちゃんに会うために、帰ってきたの。というか……うん、サクラちゃんとこうするために、帰ってきた」
 今度は照れた素振りもなく、サクラの瞳をじっと覗き込む。
「サクラちゃんの中に、入らせて欲しいなぁ」
 一瞬、絶句する。
「……腹上死なんて、冗談じゃないわよ」
「それいいね、本望かも」
「もう!バカじゃないの!?」
 ばしばしとベストを叩き、真っ赤になった顔を見られないように目をそらせた。




 サクラの衣服を首元まで引き上げると、両の胸が露になる。綺麗な桃色が目の前に現れ、指で弾いてみせると、サクラは小さく震えた。指の腹で擦り、優しく摘み、手のひら全体で揉みしだく。その弾力を楽しみながら、片方の頂を舌で舐る。サクラの身体がヒクリと反応し、ナルトを抱く力はいっそう強くなった。見上げるサクラの顔はいつもより新鮮で、すぐ耳元から甘い声が聞こえてくる。ベッドに押し倒す時とは違う感覚に、ナルトは酔った。
 スカートの中に手を忍び込ませ、下着に手をかける。
「足、あげてみて?」
「……ん」
 足首から下着を引き抜き、ナルト自身もズボンをぐっとおろした。反り返る竿の先を、入り口にあてがう。中からこぼれる蜜と先走りの汁とが交じりあい、くちゅりと音が鳴った。しとどに濡れたそこは、すでに受け入れる準備を整えているようだ。抱えた腰を、ゆっくりと下ろす。
「あ……ああっ!」
 指で慣らしていないためか、はたまた時間が空いたためか、中は思った以上にきつくて狭い。柔らかいくせにひどく締め付けてくる。そのまま先に進むことなく、熱が伝わるのを待つ。
「痛い?」
 サクラがかぶりを振るのを受けて、ナルトは腰をぐっと深く引き付けた。嬌声と共に竿は根元まで吸い込まれる。衣服をすべて取り払って素肌を合わせたかったが、服を脱ぐ時間と気力が惜しかった。口付けの角度を変えるたび、サクラの中は擦れ、身体が小刻みに揺れる。この部屋に引っ越した時、ちょっと壁が薄いのが難点だとサクラは零していた。行為の声を懸命に押し殺しているのは、そのせい。
「あっ、あっ、ん……!」
 サクラの腰を掴んで前後に揺すると、ぎゅうっとナルトの背中にしがみつき、肩口に顔を埋める。それは抑えがちな声だったが、快楽を享受しているのだと知れた。律動は、さらに早く、大きくなる。浅い箇所から、膣壁をこすり上げ、深く押し入る。奥を突くと、サクラの背中が弓なりにしなった。のけぞる喉へ、噛み付くように唇を寄せた。限界の予兆を感じ取ると、突き上げてくる吐精の気配に抗うことなく、そのまま果てた。




「ね、動ける?」
 腕の中に収まっているサクラが、少々不安そうに問いかけた。
「んー、もちっとこのままでいたいかも」
「明日ね、報告書の提出だけなの」
「あ、そうなんだ。報告書ねぇ……あれだけはどーしても苦手」
 ナルトは口を尖らせて、わしわしと頭をかく。頭を使うのは苦手だと公言して憚らず、煮詰まるたびにシカマルやらサクラやらに泣きついてくるのはいつものことだ。
「すぐ帰ってくるからさ、」
 ナルトの胸に手をおいて、サクラは顔を上げる。
「明日も一緒にいよっか」
「……いいの?」
「いいよ。だって、嬉しかったし」
「なにが」
「任務終わったあと、家に来てくれたの。嬉しかった」
「え?そうなの?」
 ナルトは、意外そうに目を丸くする。人の都合を考えずにズカズカと入り込んでくるように思われがちだが、ナルトが何の約束もなくサクラの家を訪問するのは、これが初めてのことだった。こんなに気を遣う人だったか?と思うことは、それ以外にいくつもある。人との距離感がずさんなようで、意外と距離を置く。そんな人だからこそ、もっと寄りかかってほしいと思う。そもそもサクラは、求めて欲しいと思うタイプだ。愛情を注ぎこむ相手を、ずっと探していた。ただ唯一の人を見つけた今、自分のありったけを使って満たしたい。
「そうと決まれば、早めに寝ちまおう」
 サクラの肩をポンと叩き、ナルトが促す。
「明日のために体力温存!」
 立ち上がるのも辛いくせに。
 バカ、と軽口を返したけれど、やっぱり愛おしいと思った。






※ナルトは可愛い。春野さんはもっと可愛い。二人そろうとたまらんたまらん。エイオーエイオー。ワッショイワッショイ。



2008/03/28